ユニコーン『服部』本(とUWF)
今まで、出たがりの阿部(ABEDON)の加入により、ユニコーンがコミックバンドのように路線変更したのだと勝手に思っていた。
が、事実は全然違う。
実際は、音楽を素直に愛する阿部は、裏方の仕事が好きで、インタビューなどの芸能の仕事に違和感を持っていた。
メンバー全員が歌うようになったのは、奥田民生の意向。
「服部」という言葉の響きの面白さ、意味のなさ、アルバム名を含む、民生の意向を実現するために、バックアップしたのが、阿部。
自分のやりたい音楽と違うと思いながらも、まだ経験が少なく、民生の意向に従うEBI。
民生の歌声が大好きなテッシー(手島いさむ)。
早くからバンドの方向性に不満を持ち、突然モヒカンにしたりして、スタッフを怒らせる川西幸一(メンバーの中では年上で民生の才能に抵抗してたのかも)。
レコード会社(SMA/ソニー・ミュージックアーティスツ)も、まだ景気のいい時代で、制作費などバックアップできた。
本人たちにとって、今聴けば、恥ずかしい表現もあるのかもしれないが、この本を読み、また聴きたくなった、リリースから30年の『服部』。
ちなみに、僕が無知なのかもしれないが、自分たちの曲を演奏できないバンドマンが沢山いるという事実に、驚いた。
追記:
上にも書いたとおり、自分たちの曲が演奏できないバンドマンがいることに驚きであり、その姿は、僕の好きなプロレスに似ている。特に、UWFに。
UWFとは、従来のプロレスを否定し、自分たちこそが本物であり、UWFこそが真剣勝負だと思わせたプロレス団体である。
ただ、その中身は、真剣勝負と言いながら、事前に勝敗の決まった従来のプロレスと何ら変わりのないものであったことが、今では語られている。
自分たちの曲が演奏できないバンドマンと、真剣勝負と謳いながらも真剣勝負の真似事をするUWFのプロレスラーは、実によく似ている。
また、ユニコーンをビートルズのような本物のバンドにしようとした奥田民生は、プロレスを本当の真剣勝負にしようとした第一次UWFの佐山聡(初代タイガーマスク)に似ている。
どちらも天才である。
天才は、できない周りを理解できないし、逆に、周りも、天才を理解できない(この本にも民生がぺぺっと弾くギター音がカッコいいというエピソードがある)。
佐山は、プロレス界を去り、自ら作った修斗も追放される。
佐山の周りには、良き理解者がいなかったが(タイガーマスクに憧れる純粋な青年たちとマネージャーである詐欺師《ショウジ・コンチャ》とか周りにまともな大人がいなかった…)、民生には阿部がいたことが、救いであり、阿部のおかげで、ユニコーンの再結成が実現できた。
結果、阿部ありがとう。